Sin
挨拶のスペルすら間違えているシンが、二人の名前を正確に綴った。

それは、あの日の手紙がシンにとってどれだけ嬉しかったかを物語っている。

チャンス、かも知れない。シンがこの家から一歩外へ踏み出すための。

ドリルに張り付くようにして黙々と書き続けるシンに、ジャックは思いきって話を切り出した。

「シン」

「ん」

「今度の日曜日、僕が働いている施設へ遊びに行かないか?」

ぴたり、と音が止まる。予想に反して一瞬、空気が凍った。

ちらり、と。眉間にシワを寄せてジャックを見上げる灰色の瞳。

「寝言、言ってんのか?」

やけに切り口上な返事に戸惑いつつ、ジャックは穏やかに答えた。

「寝言じゃない、本気だ。実はセイジやナディア達がお前に会いたがってるんだ。施設長も来なさいって言ってくれて」

「だから?」

シンはジャックを睨んだまま問う。


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