Sin
「おはようございます」

ジャックはいつものように穏やかな声で挨拶する。

しかし、誰もジャックに挨拶を返そうとはしなかった。

彼が握っている浅黒い小さな手を見て、奇妙な物を見たかのように眉を寄せる客。すっと目を反らす魚屋の店主。

「おはようございます」

驚いてまじまじと見ている布屋の若い女性店員。さっさと店の奥に入って行く文房具屋のおばあさん。

それでもジャックは明るく挨拶しながら歩いて行く。俯きながらついて行くシンはだんだんいたたまれなくなってきた。

俺と居るだけでジャックが嫌な思いをするんだ。ジャックまであの冷たい目で見られるんだ……。

ジャックの声、人々の沈黙が刺さるように痛い。自分の存在を責められているようで。

シンは辛くて唇を噛んだ。逃げて帰りたい。

「ウェイド先生や」

聞き覚えのあるおばあさんの声。確か八百屋の向かいの、花屋のおばあさんだ。

「なんでしょう」

ジャックは静かに答え、足を止めた。


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