Sin
「大丈夫。誰もいないよ」

「ジャック……」

シンは震えながら恐る恐る周りを見回す。

「母さん、は?」

「居ないよ」

「本当に? どこにも?」

「どこにもだ」

ほっとしたように息をつき、胸の辺りを押さえてシンは呻いた。

「痛いか?」

「……背中、苦しい」

小さな背中をゆっくりさする。少しでも楽になるようにと祈りながら。

ジャックの肩に黙って頭を預けているシン。彼の脳裏に過ぎる昨日の出来事。

『生まなきゃよかった』
『お前みたいなクズ』
『死んじゃえ!』

ねぇ……どうして?

どうして俺……。

辛く冷たい記憶と背中をさする温かい手。くすん、とシンは啜り泣きはじめた。


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