Sin
ジャックは答えられなかった。

人は言う。子は宝だ。要らない命など存在しない、と。

そうだ。それは確かに正論で真実だ。

しかし、その真実が歪んでしまった環境にいたシンにとって、その正論をただ繰り返す事に何の意味があるだろう。

幼い子が一番慕い求めている“親”という存在から『要らない』『死ね』と言われ、実際に手をかけられたシンにとって『お前は要らない子じゃない』という台詞にどれだけ現実味があるだろうか。

どうして生まれてきたんだ?
――要らない子なら。

母さんは、どうして俺を生んだんだ?
――死んで欲しいのなら。

そのシンの問いに答える事は出来なかった。どう答えたら良いか分からなかった。

頭の中に答えの見えない疑問が幾度も繰り返される。何故、何故、何故。まるで真っ黒な泥の渦に飲み込まれるように。

母親に自身の存在を否定され拒絶され、自らの価値を感じられないでいるシンにどうしたら『要らない子じゃない』事を確信してもらえるだろうか。

誰が何と言おうと、親が彼を否定しようと、シンには一人の人間として生きる権利と価値があるのだということを、どうしたら頭ではなく心で感じてもらえるだろうか。


ジャックはシンを見つめた。答えを待っている哀しい瞳。


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