Sin
「それじゃ、前の日にしっかり買い出ししておかないとな」

シンは顔を上げた。優しい緑色の瞳と目が合う。

ジャックの好きな所。どんなにくだらない本音を口にしてもバカにしたりしないで、受け止めてくれる所。

だから、何でも話せる。すごく、安心する。

俺も、こんな風になりたい。

『シンがなりたいものって何だ?』

秘密、とごまかしたけれど。俺、ジャックみたいになりたいんだ。人のために何か出来る人間になりたい。

そして、毎日を一生懸命に生きたい。例え偏見の目で見られるルージャの人間だとしても。

ふわふわのオムレツを、一口。美味し、と小さく呟く。

「記念日、一緒にゆっくり過ごそうな」

サラダのドレッシングを手渡しながら微笑むジャックの言葉に、シンは大きく頷いた。





二人は知らなかった。いや、きっと誰にも予測出来なかっただろう。

この幸せで温かい日々が、突然それも第三者の手によって奪われてしまう時がすぐそこまで来ていたという事を。


< 285 / 331 >

この作品をシェア

pagetop