短編オムニバス「平和への言葉」
「そもそもの発端は、お互いの意地の張り合いだったんだ。

ほんの少し、相手を思いやれば。

ほんの少し、相手に謝る気持ちがあれば。

ここまで、こじれることもなかったんだ。

……わたしは今でも、自分が悪いとは思っていない。

だが、これから相手に謝ることにするよ。

発端に対してではなく、これまでの態度や、意地の張り合いについてに。

……『ごめん』と、たったひとことを言う勇気が、わたしにはなかったんだ。

その一言で、どれだけ人は寛容になれるだろうか。

言う方も、言われる方も。

その一言を言う勇気を、我々は持ち続けなくてはならいんだ」

彼はそう言って微笑むと、受話器を取り上げ、プッシュした。

「わたしの子どもに、教えられたよ……」

そう言って微笑む彼の笑顔は、すがすがしく、晴れ晴れとした最高の笑顔だった。


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