短編オムニバス「平和への言葉」
これが、起爆装置。

これを時間になったら押せばいいんだ。

ほんの少し、勇気を持って押せば、後は簡単。

意識する間もなく、俺の背中にしょったたくさんの爆弾が爆発する。

俺は、痛みも感じる間もなく吹き飛ぶことができるだろう。

俺の周りにいる、たくさんの人々を道連れにして。

そうとも、一人で死ぬ訳じゃない。

恐い事なんてない。

沢山の人達が一緒にいってくれるんだ。

ひとりぼっちで死ぬ訳じゃない。

恐くない!

俺は、呪文のように言い聞かせた。

「恐くない、一人じゃない、恐くない、一人じゃない」

いつの間にか、声に出して呟いていたようだった。



< 13 / 41 >

この作品をシェア

pagetop