世界の説明書
再びあの胸の痛くなる鐘が聞こえると、人々が教会から個性をなくして出てきた。僕は彼女の後を追った。丘を下り、コンクリートの道にでて、しばらく行くといつもの公園があり、その横の小道を抜けて、そのまま大きな道路沿いに歩くと、彼女の住んでいる5階建てのマンションに着いた。エレベーターに乗って三階にあがると彼女の部屋があった。彼女は父親と黒いドアの中に入っていった。ただ、彼女の髪の黒さのせいか、ドアはグレーにも見えた。
彼女を見送り、階段を下りる際に、黒いパーカーを着た男とすれ違った。なんか、見たことがある男だな、と思ったが、その男の体からする海辺に上がってきた魚の死骸のような臭いに咽た。その男は三階をうろうろしていた。何をしているんだろう。ここに住んでいるのかな。でもだったら早く部屋に入ればいいのに、忘れちゃったのかな。まあいいか、と、足早に黄色い道に戻った。灰色のマンションこそ、コンクリートだらけの町にはふさわしい。白も、黒もない、中途半端な不安と喜びがこの町には充満していた。その中で、僕は完璧な傍観者として、異次元からこの世界を眺めていた。人間とは分かり合えない。母親の言葉が右脳の裏側から心を握った。僕が守るんだ。ママが僕を守っていてくれたように。僕が、あの子を守るんだ。
彼女を見送り、階段を下りる際に、黒いパーカーを着た男とすれ違った。なんか、見たことがある男だな、と思ったが、その男の体からする海辺に上がってきた魚の死骸のような臭いに咽た。その男は三階をうろうろしていた。何をしているんだろう。ここに住んでいるのかな。でもだったら早く部屋に入ればいいのに、忘れちゃったのかな。まあいいか、と、足早に黄色い道に戻った。灰色のマンションこそ、コンクリートだらけの町にはふさわしい。白も、黒もない、中途半端な不安と喜びがこの町には充満していた。その中で、僕は完璧な傍観者として、異次元からこの世界を眺めていた。人間とは分かり合えない。母親の言葉が右脳の裏側から心を握った。僕が守るんだ。ママが僕を守っていてくれたように。僕が、あの子を守るんだ。