世界の説明書
 こんな大事件でこのような奇跡があるのかと、人々は神の存在を感じずにはいられなかった。しかし、名子だけは世界で一人、神ではなく、彼の事を感じていた。そして心の中である事を決めた。

ゼロなんかじゃない。私はある人に助けられ、その人は、私のせいで傷ついてしまった。あの人は今どこにいるのだろう。もし、私の目が見えるようになったら、あの人を探して、お礼を告げなければ。ううん、例え目が見えなくても、あの人にもう一度お礼を言いたい。

ただ、もう一度、あの人の、澄んだ声が聞きたい、、、あの、懐かしいような、感じは何故なんだろう、ずっと昔から、私はあの声を知っていた。この世界で聞いたのかは分からない、でも、私は彼を、感じていた。お母さんのお墓のある教会で、家でも、公園でも。風が、太陽が、月が、木々が、虫達が、そう、私の周りで静かに生きている物言わぬ全てのものが、彼を私に運んできた。無音の声達、無色の光、透明な心を、、、、
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