愛してよダーリン




あからさまに“めんどくさい”オーラを出す樹の視線が、“早く用を済ませろ”と言っている。



「あたしの自転車の鍵返してほしいんだけど!」



だから、親切に簡潔に用件を言ってあげたのに……。



「は?」



この男は一言で済ましやがった。



は?って。

は?じゃないでしょ!

鍵を返してくれればいいだけなのに!



「あたしの自転車の鍵!どこにあるの?!」


「ここにある」



そう言って樹は自分のズボンのポケットを指す。



「じゃあ返して!」


「俺が帰りに使う」


「あたしだって使うもん!」


「だから?」



意地悪な笑みを浮かべる樹は、やっぱり昔と比べて性格が悪くなってると思う。



最近はいつもこう。

意地悪ばかりされる。



ただでさえ樹とは、中学に上がってから関わることが減ったっていうのに。



………あたしの気も……知らないで。




.
< 23 / 426 >

この作品をシェア

pagetop