いばら姫





自動ドアが開き
店員の『いらっしゃいませ〜!』
『北酒場にようこそ〜!』の声の中
電話で『来いよ』と言ってあった
西の彼女、アキが到着



いつもの定位置に座っている
俺達を見つけ
…そんな流行りのワンピースと髪型で
手を振りながら近付いて来た




「ごめんねー!バスが遅れてー!」


西が椅子を引いて
アキは少しツンとした顔で座る

タバコに火を着けた俺と目が合うと
何か言って欲しげに席を直した



「ねね、淳!…どう?」

「どうって?」

「…淳、ニブくなった?!
褒めてよ褒めてよ!
トータル八万円なんだから!」


西が横で見ながらハラハラしてるけど
敢えてここは、言った方が良いだろう



「――似合わない。」




アキは、電気ショックを喰らった様に
顔面のパーツを全てデカくする

そして恨めしそうに
視線をテーブルに移すと
西のチューハイを奪い取って飲んだ



しかし。
ここで軽く、良い事も言う。

「『Azurite』は
長身で、やっぱり外人体型だし
自分に似合う服装してこその
オシャレなんじゃないかな

アキは、
モデルのカニちゃんとモナちゃんなら
モナちゃんタイプなんだからさ」


「…モナちゃん…」

「そ。モナちゃん。」


アキはちょっと虚空を見てたけど
少しづつ瞳がキラキラして来た


西が顔をΣ(>▽<;)bグッジョブ!
って感じで
こっちに何回も、親指を出して来る

アキはそれにも気が付かず
ご機嫌な顔で
店長にビールを注文していた





…だけど俺自身も何だか
ここ数日
何だか自分が良くわからない。
『状況』がと言った方がいいのか…




怪我を克服し、
見事体操で金メダルを取った
"Sero"こと新原の
以前から約束されていた復帰祝い


一昨日、
GONGさん、AKARIさん夫婦の
自宅で行われた、その『オフ会』で


――― 俺はアズと、
初めてリアルで出会ったんだ






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