いばら姫





――不思議な事に

道路は思った程混んでいなくて
道があまり判らないから
適当に走った



「地図があるから
あまり遠くに行かなければ
戻って来れるな」


「 平気だよ 」


「 え?

お、国会議事堂じゃねえか?!あれ」





窓を開け、ずっと外を見ていたアズが
呟くみたいに、こう言った


「……今通った道
全部覚えてるから 」

「…まさかよ 」


「ねねね
ホテルの人が持たせてくれた
この袋、いいにおいする!」

「 開けてみ 」


「…ハンバーガーセットだ!!

もう食べてもいい?!」


「うどんしか食ってないから
腹減ったか」

「 うん! 」


アズはハンバーガーそっちのけで
ポテトばかりを頬張っている


「ぶんもはべる?」

「何言ってるかわかんねーよ!!」


俺がげらげら笑いながら口を開けると
ポテトを一本、口に入れてくれて

それをタバコのつもりで
かっこよく吸ったら
アズが吹き出した


「おまえ!アホ!拭け拭け!」


アズは二次災害を防ごうと
口を必死に抑えている


「駄目だ 腹痛ってえ
ちょっと停まるから!」


停められる所を探して
少し蛇行




何処か

青と白の標識には
"霞乃関"


高層ビルの頭が見えて
こんな無機質な都会の隙間に
大きな公園があった

冬の光に照らされたビルからの
点滅する様な、鋭い照り返しを
公園の木々達が
柔らかい光に変えている



―――路肩に停めて

アズは外に飛び出ししゃがんで
俺はハンドルに突っ伏し
肩を震わせた


「…お…俺べつに、
そんなおかしな事してねえべな!」

「タ…タイミングなんだよ笑いは!」





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