桜雪、散る

路上ライブ

翌日の授業は11時に終わった。


駅前に着くころには11時30分。


母には、『塾で宿題をやるから』と連絡を入れた。


もう怒られる心配はない。


彼女は、またあそこにいるだろうか。


そう考えると自然と足取りが軽くなる。


路地裏に到着。ヘッドフォンを外す。


段ボールは、そこにあった。


「来たの」


こくんと頷く。


彼女は、僕のマフラーとコートをきちんと身につけて、昨日よりは暖かそうだった。


段ボールの前に腰を降ろし、じゃれつく黒猫を適当にあしらう。


ギターケースを見ると、中身は空だった。


生活がかかっていると言ってたのに、これじゃあまずいんじゃ…


「……ぐう~」


彼女のお腹が音をたてた。

仕方ない。表に出て何か買って持ってこよう。


「帰るの?」


僕は首をふって駅の方を指差した。


「あたしも行く」


彼女も立ち上がる。


座っているとよく分からなかったが、立つとはっきりわかる。


物凄く小さい。


小学校低学年にも見える。
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