【完】宛先不明のラブレター
「…俺、冷たかった?」
「仕事のせいでしょう? 今忙しいのよね、」
「…ごめんな。」
「ううん。…じゃあ、私帰るね。」
…こっそりと、去っていく奥さんの顔を見た。
すごく綺麗で、大人の女性で、…あたしじゃ敵うわけないな、と思った。
『最近聡が冷たい気がして』
その言葉が、その言葉を言った奥さんの顔が、その言葉を言われた聡の顔が、頭から離れなくて。
…そしてきっと、少なからずあたしが、あの2人に…聡に、そんな顔をさせているんだろうと思うと、悲しくて、苦しくて、
……あたしの心にあった罪悪感が、大きくなった気がした。