大人になれないファーストラバー
"あたしのために"
"学校をやめた"
部分部分が耳の奥で小玉を繰り返す。
「妊娠したって言ったら、真に受けたんだよー」
「そんなデカイ嘘ついたわけ!? すごっ」
「でもそれバレたらどうすんの?」
「流産したとか言って、それで今度はほんとに子供作ればいいじゃん」
「計画的~」
「てんさーい」
と、盛り上がっている笑い声が図書室の隅々にまで響いてくる。
手を叩いてのけぞって笑っている風景が目に浮かぶようである。
あたしは手をきつく握りしめた。それは微かに震えていて、咲之助の後ろ姿を思い出すと目の奥が熱くなった。
「これで咲之助はあたしとずっと一緒っ」
弾んだその声音に、堪えきれなくなってあたしはついに本棚の影から飛び出した。
「やめてっ そんなふうに笑うのやめてよっ」
もう半分泣いているような状態で、たいそう迫力不足なことは分かってる。
けど、全部背負って学校を去っていった咲之助を、真剣に悩んでいたであろう咲之助をバカにされたようで止められなかった。