大人になれないファーストラバー



「サクー」





いつものように、保健室で幼なじみの髪をアイロンで挟んで引き伸ばしていると。
なにかのリズムに乗っているようにふらふらと動く目の前の頭に名前を呼ばれた。




「なに?」



それに手を止めずに答える。



「サクはさくらんぼ好きだよね」


「好きだな」


「どのくらい好き?」


「分かんねえよ」


「なんで?」


「知らねえし」


「じゃぁ、さくらんぼとあたしだったらどっち取る?」




突飛な質問を平坦な声でしてくる蕾。



どっち取るって。
まさかそんなおかしな質問に真面目に答えろと?





「は? 知らねえって」





出かかった答えを飲み込んでそう答えると。

出そうとした声よりも相当低くてめんどくさそうな声音で、言ってからすぐに後悔した。


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