大人になれないファーストラバー
「今なんて…」
男に迫られ、渦巻いていた複雑な気持ちと恐怖がいっきに消え失せた。
「蕾ちゃんのことが、死ぬほど好きなんだ…」
俺の問いに対する答えなのか、それともただ自分の気持ちを呟いただけなのか。
そう言うとハヤマは涙でぐしゃぐしゃになった顔で俺を見た。
クールな顔が台無しだ。
黙っていれば普通にかっこいいものを…。
「…こんなに想ってるのに、話しかけようとすると逃げるんだ」
ズイと顔を近づけて、涙ながらに語るハヤマ。
どうやらさっきの呟きは自分の気持ちを口にしていたようだ。
「逃げる? 蕾が?」
生まれてこのかた、常に蕾のそばにいるが。
話しかけようと近づいてきた人間は見かけたことがないと思う。
「そうだ。 一人の時を狙って話しかけようと決心すると、必ずヤツを見つけて走り去って行く…」
ようやく人の話しを聞く気になったみたいで、ハヤマはちゃんとした答えを返してくる。
「ヤツって、誰?」
俺は、ハヤマのそれに対し、蕾にそんな相手がいたのかと、驚いて真剣に聞き返した。
すると、ハヤマは極薄い笑みをたたえた。
その表情とは裏腹に、こめかみに青筋が浮いているように見えるのは気のせいだろうか…