砂漠の月歌 〜dream story〜




「何だよ…それ…」


写真以外完璧に証拠を消されていた事の悔しさに、姐御からギリッ…と歯を食いしばる音が聞こえた。



「それに恐らく、一人じゃない…
何人もの部下がいなければ、
こんな芸当は到底出来ない筈だ」


しかし執事は声を荒げて言う。



「だとしてもよ、
何らかの手段はあるだろっ…!?」



「奴の目的が本当に王子なのかすら
はっきり断定出来ない状態で、兵士を
動かす訳にはいかないだろっ…!!」


宮殿に兵を固めた所で、街が被害に遭う。かと言って街に兵を送り出すと、宮殿に攻め込まれる可能性が高い。

両方に兵を分担しても、敵の数が兵士より多ければ、どちらかが危険に晒される。



「……更に奴は、
一度この宮殿に踏み込んだ事から見て、
恐らく
宮殿の構造も熟知しているに違いない…」


今は全く打つ手がなかった。まさに万事休す、という状況だ。



「じゃあ何だよ…
奴は街の何処か視角に隠れてるから、
だから見つからないってのかよっ…?」


何も答えない姐御の様子を見て、執事は全てを悟る。
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