砂漠の月歌 〜dream story〜

02 これが魅力





 宮殿のフロアの衣装部屋で、舞踏会の為王子は着替えてネクタイを締め直していた。



(王子、か…)


先程執事に言われた言葉が頭に浮かぶ。



(まぁ、プレッシャーではないが…)


小さい頃からそう言い聞かされてきた事に、多少息が詰まる事もある。

今回のように。



(……考えても仕方ないな…)


小難しい事を考えるのは一旦中断して、衣装に着替えた王子は取り敢えず衣装部屋から出る。






━━━━━━━━━………………



「食堂にお皿運ばなきゃね…。」


「えぇ」


大広間へ続く通路の両端に装飾されてある絵画やレリーフを十数人のメイド達が手入れしていると、衣装部屋の扉が開いた。

ガチャッ…という音に吊られ、反射的にメイド達は目を向ける。




━━━コツ…ッ…


━━━コツ…ッ…


━━━コツ…ッ…




「まぁっ…」


思わずメイド達は手入れに専念するのも忘れ、目を奪われてしまった。
< 8 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop