未完成人一家

ある夜、弘樹が箸を上手く使えない香代子に苛立ち、殴り飛ばした。

『真奈美は一回で覚えたんだぞ?!』


しゃくりあげる香代子を見て、万里子は胸がスッとするのを感じた。

もっと、もっと、殴られればいい。

どうせ言葉で言ってもわからないのだ。

体罰は、悪いことじゃないのよ。

万里子が香代子に手を上げるようになったのは、この時からだった。



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