†Devil Kiss†

接近

──────────･････


夕方、ようやく雨がやんできた頃、マリーが帰ってきた。



｢おかえり！大丈夫？｣


｢んー、大丈夫だよ。でも、結局見つからなかったよ｣



雨具を脱ぎ、壁掛にかけた。



｢そう。･･･一体どこに行ったのかしら｣



ローズは濡れたところを拭くようにと、乾いたタオルをマリーに渡した。



｢まぁ、あの男は以前にもこんなことがあったから、村の人も失踪したかどうかについては半信半疑と言ったところだね｣



そう、実はフィデールは以前にも一度、誰にも行き先を告げずに、いなくなったことがあったのだ。



その時は丁度両親がいたため、大騒ぎになり村中での大捜索となった。



だが、結局は数日後にひょっこり帰ってきたのだ。



それでも、詫びの一言もないので、村の人もその頃からフィデールへの見方が変わった。



しかし、表向きは以前とは全く変わらない。



結局、彼が何をしようと、逆らえるのは誰もいないのだ。




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