ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
「…はい、おかげさまで…もう大丈夫です。ご心配おかけしてすいませんでした」
「よかったね〜! アオがなんだかんだでさーソラくんが体調悪いの気付いてたみたいだよ」
「え、アオ先輩そうだったんですか…?!」
「………」
「ぶきっちょなんだよねー。もっとちゃんと言えばレオに怒鳴られることも、うーちゃんをあんなに心配させることもなかったのにさー」
「……リオ」
「ま、みんな無事だったからいっか! 結果オーライで! おなかすいたーアオ朝ごはんー」
相変わらずマイペースなリオに、無表情で言葉の少ないアオがため息を零す。
そしてリオに促されるまま、ふたりは再び小屋の中へと戻って行った。
しばらくして中から賑やかな声が聞こえてきたので、レオも既に起きているようだった。
なんだかんだでみんな、仲が良さそうに見える。
それから間もなく朝日が暗い森に降り注ぎ、朝を告げる光がゆっくり満ちていく。
その光を全身に浴びながらどこか不思議な気持ちで森を見上げた。
ここで過ごした記憶もこの朝日も、今ちゃんと刻まれている。
「僕らも行こうか」
「あ、うん」
ソラが微笑みながらうららの手をひいて歩き出し、うららも反射的に頷きその背中に続いた。
───あれ…さっきまでわたし、ソラと話しを…
『好きだよ』
「──……!」
ソラと話していた内容を思い出した途端、うららの顔に、全身に、熱が走る。
ソラはまるで何もなかったかのように、いつも通りだ。
うららも今更話を蒸し返すことなんかとてもできず、ただ黙ってソラの後を歩いた。
いつもとは違うソラの手はまるでソラじゃないみたいだった。
何も変わらないはずなのに、今までの自分じゃないみたいだ。
それはうららが今までずっと知らなかった、初めての感情だった。