ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
「エメラルドの都はここ以上に光が溢れています。この先に進むのなら、特別なメガネを着用してもらわねばなりません」
説明口調で門番は言い、引き寄せた箱をトントン、と指先で軽く叩いた。
それと同時に箱の蓋が勢いよく開く。
「この中からそれぞれご自分に合うメガネを選んでください」
言われるがままに箱の中を覗き込むと、そこには様々な形とサイズのメガネが溢れ、それらはすべてレンズが緑色だった。
「このメガネなら、エメラルドの光を和らげてくれるでしょう。エメラルドの都で過ごすのに欠かせない、特別なメガネです。
さぁ、選ばれた方から、こちらへ」
戸惑いながらも言われるがままに、5人は適当に見繕ったメガネを手に取り着用する。
皆こそりと不平を漏らしながら、門番の前に並んだ。
うららの場合は視力は影響しないのでメガネを変えてもさほど問題はないけれど、アオは大丈夫だろうか。
そう思いながら視線を向けた先、みんな一様に緑色のメガネをかけていている姿がなんだか異様で意外で可笑しくて。
少しだけ、笑ってしまった。
「さて、皆様選ばれたようなので、ひとつだけご注意を。
ここから先、そのメガネは決して外さないでくださいね。エメラルドの光で目が潰れてしまいます。
と言っても、鍵をかけさせて頂きましたので、ボク以外はずすことはできないのですが」
なんでもないことのように言い、腰元にぶらさげていた無数の鍵のついたキーチェーンをじゃらりと鳴らす。
「鍵…?」
「用心の為です。それがないとオズと直接お会いすることはできませんから」
ますます、オズという人物がわからない。
それでもオズに会わなければ、願いを叶えてもらえない。
行くしかないのだ。