月と太陽の事件簿8/微熱混じりの推理
「達郎!」

あわてて駆け寄ったあたしに達郎は手を振って言った。

「大丈夫だから」

瞳の光はそのままだが、視線はどこかうつろ。

声にも張りがない。

「大丈夫じゃないでしょどう見ても」

インターホンで梅谷さんを呼ぼうとした手を達郎が止めた。

「本当に大丈夫だから。それよりもレミ…」

「なに?」

「台所行って、コーヒー取ってきて」

あたしは一瞬ためらったが、意を決して部屋を出た。

バカ長い廊下を歩き台所にたどり着く。

冷蔵庫を開けると、中には缶コーヒーが1ダースそろっていた。

銘柄はジョージアMAX。

練乳入りのメチャ甘な缶コーヒーで、達郎の大好物だ。

1本をつかみ取り、台所を出ようとした時、麻砂お婆ちゃんとばったり会った。

「麗実、事件の話をしたのね」

お婆ちゃんはあたしの手の中にある缶コーヒーを見つめた。

あたしがうなずくと、仕方ないといった感じで、小さなため息をついた。

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