きみとベッドで【完結】
浅倉はなにも言い返さず、
ただ固まったようにその場に立っている。
シキの言葉に傷ついているのだろうか。
ここからでは、その顔は見えない。
「あたしは望むものなんてなにひとつ手に入れてないよ。望めばなんでも手に入るのはあんたでしょう、姫衣。
すべてにおいて恵まれて、誰からも……神さまにだって愛されてる」
願えばなんだって叶うんだから。
そう言ったシキ。
俺は去年の七夕のことを思い出した。
『願い』
その言葉に妙にこだわっていた彼女の顔。
苦しそうに、俺には見えた。
「でも、あたしだけは違う。あたしだけは絶対に、あんたを愛してなんてやらない」
まるで永遠を誓うプロポーズのように、
甘く優しくそう呟いて。
シキは浅倉を残し、いなくなった。