きみとベッドで【完結】
幹生にだけはどうしてか、シキと呼ばれていたいと思う。
織羽とは、どうしても呼ばれたくないんだ。
その理由を、たぶん幹生は知っている。
「帰る」
「えぇ? もう?」
「あんたの出番は終わったんでしょ?」
「わかったよ。送りますよお姫さま」
うやうやしくあたしの手をとって、幹生は立つ。
うさんくさい笑顔の男にエスコートされ、
あたしはジャズバーをあとにした。
「今日は自分の部屋に帰る」
「そう? それは残念。もっといてくれてもいいのに」
「あんたの横じゃ、安心して眠れないんだよ」
あたしはもう3日、風邪だと嘘の連絡を入れて学校を休んでいる。
その間幹生の部屋で、なにをするでもなく過ごしていた。