きみとベッドで【完結】
駅から少し歩いたところにある、静かなショットバー。
その店の黒い扉には『準備中』の札がかかっていたけど、
あたしはそのまま構わず、店内に入る。
開店にはまだまだ早い時間だったけど、
薄暗いホールには控えめに音楽が流れていて、
カウンターにはライトの光が落ちていた。
「いらっしゃい、シキ」
奥から重そうなビニール袋を2つ持った、ヒョロリと背の高い男が歩いてきた。
「幹生、いたんだ」
「いま開けたばっかりだよ。座って」
張り付いた笑顔で、あたしをカウンターに促すバーテンダー。
長ったらしい黒髪の上半分を、後ろで1つにまとめて、
ネクタイはせずだらしなくシャツの前をゆるめているこの男は、
茅島幹生(かやしまみきお)。
このバーのオーナーの、義理の息子。