危険な誘惑にくちづけを
 皆、にこにこ笑っていることは、笑っているんだけども。

 男子四人で、女の子たちを取り囲むように立っているような気がして、わたし。

 そっと、水島の背中に張り付いた。

「……ん?
 どしたの? 春陽?」

 どうやら、水島的には、何も違和感がないみたいで。

 彼女は、いつもと変わらず、佐倉君をげしげしやっつけて、笑ってた。

「ううん、なんでもない」

 皆が楽しそうなのに、わたし一人で雰囲気を壊しちゃ、マズイよ、ね?

 不安なキモチをかくして、笑ったら。

 佐倉君がそっと近づいて来て、ささやいた。

「大丈夫。
 オイラがいる限り、春陽ちゃんのことは絶対守ってあげるから。
 何も、怖いことは、ないよ?
 だから今日は、笑って?」

「え?
 わたし、笑ってない?」

「……うん。
 ちょっと、引きつってる」

 わたし。

 みんなと合わせているつもりだったのに……。

 水島も気がついてないみたいなのに。

 佐倉君だけが見破って、心配そうな顔を、わたしに見せた。

「もし、本当にダメそうだったら教えて?
 オイラが、こっそり、帰してあげる。
 春陽ちゃんの家まで、送ってあげるから」

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