砂に書いたアイラブユー
第20章
     20
 月日が流れ、僕は奈々が大学の卒業式に出席した二〇一一年の春先、大学生活が始まってから借り続けていたマンションで毎日執筆しながら過ごしていた。


 彼女はイギリスに留学するため、着々と準備しつつあるらしい。
 

 確かロンドン文化大学という学校で、留学期間は一年を想定しているようだった。


 僕は奈々が留学先の大学を卒業してから、日本に帰ってくるまで待つつもりでいる。


 お互い一緒になりたいと心から思っていたからだ。


 そして彼女は大きなトランクを抱え、すでに現地に小さなアパートを借りているようなので、引越しの準備も整っているようだった。


 僕はさすがに成田空港までは行けなかったが、今いる九州の空港のターミナルで奈々を見送った。


「じゃあまた一年後」


「うん。しっかり勉強してから帰ってこいよ」


「ええ。帰国してもまた首都圏の大学の院に行けば、会えないかもしれないけど」


「大丈夫だよ。俺は君が来てくれるのをいつまでも待ってるから」
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