不器用なLOVER
31st regret
顔も手もマッサージしてもらい

「お姫様になったみたい…」

気持ちが口から飛び出した。

「お姫様ですよ」

長谷さんがそれを肯定したから、恥ずかしさが込み上げてきた。

「顔の皮膚が薄いのかしらね?
真っ赤に変色していくわ」

鉄ちゃんが笑った。

「すみません。
お姫様なんて…子供ですよね?」

下げた頭を鉄ちゃんが両頬を挟み持ち上げる。

「ほら動かさない!」

「ごめんなさい」

再び下げそうになった頭を戻す。

「次やったらデコピンね!」

笑ってはいるけど…
鏡越しの鉄ちゃんの目が怖い。

「透弥様は…」

長谷さんが唐突に名前を出すので鼓動が大きく波を打つ。

「えっ?」

私の慌て振りに
手を止め目が合った。

けど、直ぐに手元に戻し
ネイルを始める。

「先程の…お姫様の話ですが…」

指先を見つめたままの長谷さんが呟いた。

「あれはもう忘れてください!
それよりも…」

照れ隠しに別の話題を振ろうと
する私を止め、

「いえ、少なくとも透弥様は、
貴女をお姫様の様に大切に…、
特別に思われていますから。
透弥様のお姫様ならば間違いなくお姫様ではないかと思いますよ」

ボソボソと告げた。

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