恋人は専属執事様Ⅰ
「松本さん、ごきげんよう」
後ろから抱き付きながら、二階堂さんが挨拶して来た。
順番が逆だと思うけど、もう慣れてしまった私。
「二階堂さん、おはようございます」
後ろにいる二階堂さんに応える。
不意に腕を掴まれ、私は二階堂さんから解放された。
私と二階堂さんの間にさり気なく割り込み、私を背後へ匿うように藤臣さんが立っている。
「おはようございます、二階堂様」
ニッコリと二階堂さんに微笑む藤臣さんに、負けじと二階堂さんもニッコリと微笑みながら言い返す。
「ごきげんよう、執事様」
また火花が…
「それでは淑乃様、わたくしは失礼いたします。何かございましたら、ご連絡をお願いいたします。直ちに参ります…必ず」
藤臣さんはそう言って、私にバッグを渡してくれると行ってしまった。
今日から授業だったけど…難しかった~!
一応、教科書には目を通しておいたけど、理解はしていなかったみたい。
帰ったら復習しなきゃ。
そんなことを考えていたら
「松本さん、少しお話をいたしましょう」
と担任の先生に呼ばれた。
この学園には職員室と言うものはなく、応接室みたいな場所へ連れて行かれた。
「執事メイドクラスの生徒と専属契約を交わす規則はご存知ですね?」
「はい」
そうだった。
ちゃんと考えようと思っていたんだけど、週末に色んなことがあって忘れていた…
「本日の午後に執事メイドクラスのデモンストレーションがあります。それを参考に、早めに契約を交わしてください。お話は以上です」
「はい、ありがとうございます」
そう応えると私は立ち上がり、ドアの前で会釈して教室に戻った。
デモンストレーションと言うから、体育館の壇上で行われるとばかり思っていたけど…
実際は、執事メイドクラスの生徒が紳士淑女クラスの教室へやって来た。
高等部の1年から3年までが一同に揃って壮観だった。
既に専属契約を交わしている生徒は除外ってことだけど、何だか執事候補生が沢山いるのは何で?
さっきの先生のお話だと、早く決めなきゃいけない感じがしたんだけど…
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