恋人は専属執事様Ⅰ
衣服を整えて軽くベッドを直し、カーテンから顔を出した私は校医の先生に手招きされてそちらに歩いた。
先生の隣りに座り簡単な診察を受けて、無事に太鼓判をもらった。
良かった、4限はサボっちゃったことになるけど5限には間に合う。

「もう入って来ても良いわよー!」
先生が廊下に向かって声を掛けた。
『痛っ!何すんだよ、弓弦ー』
『学園内では苗字で呼べ。それに、ノックが先だろう?』
廊下が賑やかになり、ドアをノックする音が重なり合って聞こえた。
『何故河野までノックする?』
『俺がノックしたかったの!』
私は先生と顔を見合わせて、喧嘩する程仲が良いって本当ね~とクスクス笑い合う。
「ハイ、どうぞー!」
先生の返事の後、ドアが開いて
「「失礼いたします」」
と一礼する2人の姿が目に入る。

私は今、鷹護さんと河野さんに挟まれて3人で並んで廊下を歩いている。
授業中だし1階に教室はないので、廊下を歩く人影もなく私たちの足音が響くくらい静かだ。
さっきのハプニングを含め、私が倒れたことまで謝罪する2人に、私は気にしていないと何度も伝えた。
本当はまだ恥ずかしいけど、2人にとっても予想外だったから怒れないもの…
でも、出来れば早く忘れて欲しいなぁ…と。
中にキャミソールを着ていたとは言え、何だかとっても恥ずかしいから。
河野さんは攣った腹筋が治らないそうで(どれだけ笑ったの?)鷹護さんと交代に。
紳士淑女クラスと執事メイドクラスを分ける渡り廊下で、別れ際に河野さんが鷹護さんに
「今夜のオカズにすんなよ、ムッツリ」
と言って、鷹護さんから拳骨とお説教を喰らっていたけど…
ムッツリってどんな食材なの?
何で河野さんは鷹護さんにあんなに叱られてるのかな?
寮は二食付きだよね!?
メニューは寮生以外に漏らしちゃいけないのかな?
………
河野さん、庇っている腹筋は大丈夫なのかな?
大丈夫…だよ……ね?
< 54 / 70 >

この作品をシェア

pagetop