恋人は専属執事様Ⅰ
「ヤッたと思ってたの?なんだ、話合わせれば良かった」
…は?
私を睨む秋津君と、そんな秋津君の視線を辿り私の顔に行き着いた宝井さんの呆れた視線が痛い…
「何で淑乃までそう思ってたの?俺、寝てる女とするくらい飢えて見える?」
「寝てません!」
「松本、そこじゃねぇだろ…」
傷付いた素振りを見せる宝井さんに怒る私に冷静にツッコミを入れる秋津君。
覚えてなかった初めてがまだだったことに安堵した私に
「淑乃、今から昨日の続きヤる?」
とニヤリと笑う宝井さんと
「松本…ハッキリ拒絶しないとまた悶絶するぞ、このバカ!」
と怒声を飛ばす秋津君。
そうでした…宝井さんとはしっかり過程を済ませつつあることに変わらない訳で。
寧ろ、今後の防衛が課題なのよね…
「教室に戻ろうかな?」
宝井さんとベッドのある部屋に一緒にいるのはマズいかな?と思って言ってみたら…
「それは無理」
と即答する宝井さん。
「え…何で?」
驚いて訊く私に、秋津君はバツの悪そうな顔で黙り込み、宝井さんが代わりに答えてくれた。
「俺を殴ったのがバレたら秋津は暴力沙汰を起こした罰で停学処分。だから、俺は顔を秋津は拳を冷やして腫れが引くまで、教室にもクラスにも寮にも戻れない」
えぇっ!?そうなの?そう言うものなの?
あれ?でも秋津君は冷やしていないよね?
宝井さんはバレてもお咎めナシなのに真っ先に冷やし始めたよね?
宝井さんと秋津君を交互に見る私。
「秋津も早く冷やせば?お仕えするお嬢様にご迷惑をおかけする要因は、大小を問わず直ちに排除するのも使用人の役目だろ?」
先輩らしい宝井さんの言葉に、ずっと黙っていた秋津君が小声で返事をして拳を冷やし始めた。
「宝井さんて実は後輩思いの先輩なんですね」
と感動しながら言う私に
「これは俺の為だけど?綺麗な顔が台無しになるだろ」
と平然と言い放つ宝井さんと
「そんな奴だから嫌なんだ…」
とげんなりしながら言う秋津君。
何か男子の縦社会が垣間見えたかも…

終業のチャイムが鳴るまでに何とか2人の腫れは収まったけど…溝は深く。
でも、言いたい放題言い合えるのは仲良しの証拠?
「淑乃、次はいつ2人になれる?」
「松本も少しは警戒しろ、バカ!」
依然、私の貞操の危機は厳戒警報のまま…ピンチです。
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