三日月の雫

・報復・



「遼太郎くんの家に寄るんだったら電話してよ」



嬉しそうな笑顔でそう言いながら、かんなは遼太郎の部屋に入り、コートを脱ぐ。

黙って遼太郎の家に来たことを怒るわけでもなく、かんなは「まったくもう」と笑みを崩さなかった。

余裕すら感じるかんなの態度に、僕は凍りついた。



「ねぇ、人の家に2人きりなんて、ドキドキしない?」

「……別に…」



僕はポケットに入れた携帯に手を触れた。

もうすぐ、柚羽が来る。

何とかして、連絡しないと……。



「遼太郎くんのお父さん単身赴任中で、お母さんも一緒に行ってるんだよね。いいなぁ」



どうでもいい話を、かんなはゆっくりと話す。

< 169 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop