三日月の雫

かんなは横からハンドルを奪い、力いっぱい回した。

予期さえしなかったかんなの突然の行動に、僕の手が一瞬、ハンドルから離れる。


僕はとっさにブレーキを思い切り踏んだ。



――キキキーッ!!!!



すさまじいブレーキ音が、雨音と共に耳に飛び込んでくる。

同時に。

目の前にガードレールが現れたかと思ったら、大きな衝撃音とともに消え去る。



そして、新たに現れた景色は。

雨で濡らされたたくさんの木々と、どこまでも続く奈落の底だった。




――永輝……。

遠くで、柚羽の声が聞こえたような気がした。

< 218 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop