三日月の雫

・痛み・

バイトが終わると、僕は大急ぎで着替えた。



「結崎さん、もう帰るんですか?」

「うん、ちょっと用事があって」

「そんなぁ。今日で最後なのに」

「あ、ちょっと頼みごとがあるんだけど」



『最後』という言葉に僕は過敏に反応した。



「『石塚かんな』って子から電話があったら、接客中とか言ってごまかしといて」

「へっ?」

「オレが帰ったことは言わないでほしいんだ。ナイトで朝まで入ってるってことにしといて」

「…はぁ」

「オレからの最後の頼み!」



巧妙なアリバイ協力。

もしかしたら店に電話してくるかもしれない。

< 82 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop