三日月の雫
しばらくの沈黙。

啓介さんは吸いかけのタバコを捨てると足でもみ消した。



「…もう、かんなにはかまうな。オレが何とかする」

「えっ?」



殴られるとばかり思っていたから、啓介さんの言葉に僕は拍子抜けしてしまった。



「おまえにはおまえの気持ちってもんがあるだろう?」

「……でも…」

「かんなを、また好きになれるのか?」

「……啓介さん、オレ……」



言うべきか、言わないべきか。

一瞬、迷った。

だけど、啓介さんにだけは伝えるべきだと、思った。



「――好きなヤツがいるんです」

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