ラビリンスの回廊
「俺様の本当の名は、イシュト・ブラウ。
ブラウ王国の王位継承第一王子だ」
「イシュ……」
ヴァンの言葉に被せるように、イシュトは手を上げて牽制する。
突然の告白に驚くこともなく、ルクトは落ち着いて言葉を返した。
「第一継承権のある王子様ね……
なんだってまたこんなとこに?
あぁ、戦争を止めるためだっけ。
さしずめ、さっきの奴等はイシュトくんを連れ戻しに来た捜索隊ってとこかな?」
王子様と呼んだほうがいい? それともイシュト様? なんて言いながら、ルクトはイシュトの顔を覗き込んだ。
「今まで通りでいい。
それより……」
苦々しく口を濁したイシュトに、ルクトはにやにやと笑った。
「そー?じゃ遠慮なく。
これまで通りで呼ばせて貰おっと。
この先も長い道のりだし、仲良くいこーじゃないの」
ルクトの後半の言葉に、イシュトは小さく息をついた。
面倒事に巻き込まれたことはわかったろうに、それでも共に行くと言ってくれたルクトに感謝しながらも、ルクトの真意が見えずに様子を窺った。
「その代わり……」
折よくそう言ったルクトに、どんな条件が出されるのかと身構える。