ラビリンスの回廊
「むしろ礼を言わねばならぬと思っているくらいなのですよ。
美談に携わることが出来、涙が出そうです」
涙という言葉を、欠伸するような口をあけて発音する。
返事をしないオーウェンと、警戒をにじませる周りのものをチラリとみて、笑った。
「あのような猿芝居をし、自分が悪者になってさえ、
ルノ殿を逃がしたかったという、オーウェン殿の美談に──」
ニヤリと口角を上げた男は、ぞろりと白い歯を覗かせる。
「誉れ高く“悪役”として出演出来るのがねぇ」