ラビリンスの回廊
気だるげに言った玲奈は、トレードマークの金髪をふわりとかきあげ、それと同時に大きく伸びをした。
ついでとばかりに、特大のアクビも一つ。
それにイラつき更に睨みをきかせた女に、チラリと視線を向けた。
女は玲奈の視線に威圧を感じたのか、ぐっと言葉に詰まる様子を見せた。
だが、玲奈は直ぐに興味を失ったようで、視線は面倒くさそうに背けられた。
玲奈の視線が己から外れ、経営難により封鎖された地下駐車場─今は『朱龍』の溜まり場と化している─に向けられたことで、玲奈の重圧から逃れた赤い女は、自らを奮い立たせるかのように、チッ、と舌打ちをした。
それにより再び威勢を取り戻した女が、玲奈に鉄パイプを向け、見せつけながら言った。
「あんた、ハルミのオトコ、たぶらかしてんじゃないよ」
その言葉に、玲奈は驚き大きく目を見開いた。
「は?知らないけど。
言いたいことはそれだけ…?」
その言葉に、女の隣にいた者がキレた。
「知らない?
そんな言い訳が通用すると思ってんの!?
ふざけんなっ!!」
そう言って殴りかかろうとした女を、鉄パイプを横なぎに突き出すことで諫め、ニヤリ、と赤い女は笑った。
「ハルミ、そう慌てなさんな。
せっかくとっておきを用意したんだ。
そのあとに気の済むまでボコればいい」
そう言うと、クイと顎をしゃくった。