ラビリンスの回廊


悔しい、と泣くのは簡単だ。

無力で不甲斐ない自分を責めるのも、容易い。


――でも。

玲奈はキュッとつま先に力を込める。


――あたしがそれをしちゃいけない。


悔しい思いをしているのは自分だけではない。


村を出てからのルクトたちの言葉や態度を思い返し、改めて痛感した。


ほんの少し共に旅をした玲奈でさえ、自らの無力さに、こんなにも胸をかきむしりたくなるのだ。


イシュトたちの心中を思えば、無力な自分を嘆いてる場合ではない。


わかっている。

しかし、割り切れない気持ちになるのは、止められなかった。


前方を仇のように睨み据えながら足を動かす玲奈に、ルクトがそっと呟く。


「ルノちゃんだもの、きっとうまくやるよ」


根拠のない希望的観測でしかない。

言った当人も、気安めとしか受けとって貰えないだろうとわかっている風だった。


しかし玲奈はそれが唯一の真実であるがごとく、ルクトへ小さく頷き返した。


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