ラビリンスの回廊


皆が目を凝らしてソレを見詰める。


エマの口から言葉が零れ落ちた。


「まさか……あれは……」


エマの一番近くにいたイシュトが聞き咎め、振り返ることはせずに、言葉だけで問い掛ける。

「紅玉、か……?」


紅玉を求めて旅をしていたイシュトだが、どのような形状をしているのかは知らずにいた。


赤く、空から光り落ちるものから連想し、実物を見知っているルサロアのエマへと尋ねたのだが、彼は半ば確信していた。


玉というからには丸いものだろうというくらいしか想像していなかったが、歪なかたちをしていることが意外だった。


そして、距離のあるここから見ても、思っていた以上に大きい。


どんなに大きくても手のひらで持ち上げられる程度と考えていたが、明らかに度を越していた。


しかしイシュトの言葉を、エマは否定した。


「違います。あれは、紅玉ではなく……」


続きは、玲奈の声で遮られてしまう。


驚愕に固まった玲奈が、目を見開き、絶叫した。


「なんで……なんで、あいつが……!」


< 246 / 263 >

この作品をシェア

pagetop