ラビリンスの回廊
ぶるっと体を震わせた玲奈を、エマが感情の見えない瞳で見ていた。
「ちくしょう……」
そうごちた玲奈を見るエマ。
エマの乏しい感情に、玲奈の心の奥がザワザワと波打つ。
「おーい?どしたの??」
不意に近くでルクトの声がして、玲奈は思わず声をあげそうになった。
玲奈を驚かせた張本人は、心底不思議そうに玲奈のそばに立っている。
「なんでもねーよ」
強がった玲奈に、ふうん、とルクトは頷いた。
少し離れたところで話込んでいるイシュトとヴァン。
二人にチラリと目をやったルクトは、そっと玲奈に囁いた。
「それよりレイナ、気付いたか?」
じり、と半歩下がりながら、玲奈は訝しそうにルクトを見た。
「なにが?」
「なにが?じゃねーよ。
髪だよ髪っ」
苛立たしそうなルクトに、玲奈はムッとしながら返事をする。
「兄妹して回りくどいんだよっ。
ハッキリ言えよ」
「だーかーらー。イシュトってヤツの髪だよ。
髪の色。
ありゃあ、高貴なる者の血をひいてるね」