ずっと好きだった

差し出された紙をスッと受け取ると、


「それに記入して今日中に出すように言っといて。横山君だけ未記入だったから」


そう言って男はそそくさと教室を出て行く。


「またあたしかよ…」


何かとあればあたしに頼み事をしてくる。


ほんと…何もかも嫌なんだけど…

深く溜息を吐き捨て、その紙に目を通す。


「進路希望…」


そう書かれてあった。

仕方なく机の中に入っているシャーペンを取り出して席を立ち教室を出る。


「ねぇ、七瀬さん…」


出た途端、思わずその声にあたしは顔を顰めた。

そう声を掛けられると、いい話ではない。

だから思わず顔が曇る。


前方を見ると2人ギャルが笑顔であたしに近づく。


「あのさ、七瀬さんってカケルと仲いいけどほんっとに付き合ってないんだよね?」

「最近さ、カケル相手してくんないんだよね。だから七瀬さんからも言っといてよ」


あたしは伝言板じゃねぇよ。そう思いながら、ダラダラと甘ったるい声でそう言ってくる女に、


「分かった」


と、だけ告げあたしは足を進ませ屋上へと向かった。


< 2 / 51 >

この作品をシェア

pagetop