手紙
手紙
親愛なる我が友人へ


 大丈夫。
 それは私から私への戒めの言葉でした。
 不思議なもので、言葉を生み出したはずの人間は、いつの間にか言葉に依存するようになって、ついには言葉に支配されるようになってしまったのですね。私はそこに皮肉を感じます。
 でも、仕方ないのですよね。
 言葉以外で、自分の気持ちを伝えるってすごく難しいから。
 態度なんかでわかってくれるなんてこと、滅多にありません。
 なのに、どうしてでしょう。すごく怖いのです。自分の気持ちを口にするのが、すごく怖いのです。しかも、自分に近ければ近いだけ、その怖さは増して、何も言えなくなるのです。
 だから私は言います。
 私は、大丈夫。
 それは確かに、他の人に向けた言葉ではあるけれど、私自身に向けた言葉なのです。そうすることで、今を生きていける気がしました。本当に大丈夫なような気がしていました。
 けれど私は決してこの言葉を他人には使いません。このように重く無責任な言葉を軽々しく使えないことは、普段から使っている私が一番よくわかっています。
 あなたはとても不思議な人ですね。
 真っ直ぐで何があってもめげない、強い人。だから周りもあなたをほっとけない。ほっとくことができない、と言うのが正しいのかもしれません。
 どうしてなんでしょう。本当に強い人には支えてくれる人がたくさんいて、本当に弱い人には支えてくれる人がいない。
 私は最初あなたが大嫌いでした。そして、今も大嫌いです。
 あなたは物語で言うなら立派な主人公です。仲間思いで意思が強く、みんなを引っ張れるだけの力があります。それを演じるのはさぞかし快感だったでしょう。けれど主人公が守るのは所詮仲間だけ。他のモブなんてお構いなし。いいえ、見えてもいないでしょう。それもまた、主人公というものです。
 ずっとずっと、疑問だったことがあります。少女漫画の話では、ヒロインがいて、ヒロインの想い人がいて、恋敵がいて、というのが典型的なパターンです。そしてヒロインは真っ直ぐ想い人を愛し、恋敵は邪魔なヒロインに意地悪をする。そして結局その恋敵には恋にも敗れ、人間としての戦いにも敗れてしまうのです。
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