黄龍
紗里は立ち上がると、露暴を。
次いで久遠を半ば引きずりながら道の真ん中から石壁の軒下へと運んだ。
それだけで息が上がり、腕に怠さを覚えた。


端へいた方がまだキメラに見つからないかもしれない。そんな思いからの行動だった。


「……よし」


紗里は屈んで久遠の息があることを確認すると、立ち上がり小さく呟いた。


そして走り出した。


鴉の待つ病院よりも、近い場所。


紗里にとっては一つの賭けだった。






「三章・了」
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