黄龍

硬質な靴音が薄暗がりに響く。

強く、高く、速く、苛立ちを地面へ押し付けるようにけたたましく響き渡る。


実際、この音の持ち主は苛立っていた。


ーー何故だ。
何故、私を戻した。


一歩踏み込む毎に、怒りに煮える内臓の温度が上昇していくようだった。




腕が痛む。
腕全体を包むように、生暖かな血が流れているのが嫌でもわかる。

腕を振れば放物線を描いて散った。
その流れる血ですら今の胡弓にとっては苛立ちを助長させるものにすぎなかった。


黄龍中央部。
久遠へ再戦を望もうとした次の瞬間、胡弓はそこへいた。
強制的に連れ戻されたのだ。


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