星屑
散々馬鹿騒ぎをして、スッチとは別れた。


断ったのに、ヒロトはあたしを家まで送ると言い出した。


もちろんこいつも単車のくせに、わざわざ一緒に歩いてくれるから、その優しさが嫌になる。



「なぁ、さっきの話だけど。」


街から離れたところで、ヒロトは言葉を手繰り寄せた。


思わず足を止めてしまい、あたしは身を強張らせ、「何の話?」と曖昧に笑う。



「お前、誰のこと想像した?」


滑るように、ヒロトの瞳がこちらへと向けられる。


上手く笑えてない気がして、目が泳ぐあたしを見逃してはくれない。



「俺が気付いてないとでも思ってる?」


足を引くと、まるで逃げないようにとヒロトは、あたしの腕を捕えた。


距離が縮まり、その瞳が怖くてぐっと目を瞑る。



「ビビんなよ。」


恐る恐る目を開けるのと同じタイミングで、腕を掴む手が緩められた。



「お前、普段平気な顔しといて、いきなりそういう反応する?」


掴まれた場所が、まだ少し熱を持っている気がした。


勇介とは逆の、ひどくあたたかい手だ。



「…ごめん、びっくりして。」


違う、ヒロトの言葉に、だ。


何かを気付かれたような気がして、だからヒロトのことが怖くなった。


この人もまた、あたしを見透かしているような瞳をすることがあるから。

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