星屑
静寂の中で少し落ち着いた時、異質に鳴り響いたのはあたしの携帯の電子音だった。


それを持ち上げてみれば、“樹里”と表示されている。



『さっき、さゆから電話あった。』


「…うん。」


『親に話して、病院行ったって。』


「…うん。」


『明後日、手術するって。』


ぽつり、ぽつりと伝えられる事実は、ひどく物悲しいものだった。


悔しくて、悲しくて、肩を震わせるあたしを、勇介が支えてくれる。



『大地とは、別れたんだって。』


わかっていたはずだった。


でも、電話口の向こうで樹里が泣くから、あたしだってまた堪え切れなくなる。


互いにもう話すことさえ出来ない状態で、結局は電話を切った。


堕ろすという決断をした沙雪を責めるつもりはない。


それでも、自分の生い立ちと重ねてしまう部分もあり、命の重さを知った気がした。


まだ小さな頃、あたしを女手ひとつで育てるために、ママがどれほど苦労をしたのかも、少しは分かるつもりだ。


寂しい想いをしたことがないと言えば嘘になるし、父親が欲しいと思ったこともあった。


でもきっと、あたしが今、ここに生きていることは奇跡なのかもしれない。


沙雪はそれを気付かせてくれたんだ。



「…さゆっ…」


携帯を握り締め、吐き出すように絞り出した。


勇介もまた、本当に辛そうな顔をして、そんなあたしを抱き締めてくれた。


まるでみんなで懸命に、この罪を分け合っているかのよう。

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