星屑
どうしてこんな時に、その話題を選んだのだろう。


肌を撫でる夜風は生温かく、少しの湿度を帯びている。



「そんなんじゃないけど。
でも、支えてもらってるのかも。」


あたし達の間では、付き合うだとかそんな、形式ばったことは関係がないのかもしれないと、最近は思う。


出会いから順序がめちゃくちゃで、でも気付けばいつも、勇介はそこにいてくれている。


だから今はそれだけで良くて、そしてはっきりさせることも少し怖い。


なのにシンちゃんは、何も言ってはくれなかった。


代わりに彼は、自らが作った沈黙の中で息を吐いた。



『なら、俺が心配するようなことは何もねぇんだな?』


電話越しにも、彼の顔は容易に想像が出来る。


シンちゃんは時々、怖いほどの顔であたしを不安視することがある。


父親のようで、でもどこか違う、何と表現すれば良いのかもわからない顔だ。


彼が言う“心配”とは、どういう意味でのことだろう。



「大丈夫だよ。」


それだけ言って、電話を切った。


泣きそうな顔を勇介に向けてみれば、彼は首を傾け優しく笑う。



「何の話してたの?」


「別に普通のことだよ。」


それだけ言い、もう帰ろうよ、と促した。


飲み込まれてしまいそうな夜が嫌いだ。


だからあたし達は、どちらからともなく手を繋ぎ、偽物の輝きの中で互いの存在に安堵している。


愛が何なのか、やっぱりわからなくなる瞬間だった。

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